息ぬき

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ホームページ管理者の特権で、「息こらえ」ならぬ「息ぬき」をちょっとさせてください。
あまり豊富な話題を持っている方ではないので、頻繁に更新はできませんが、潜水に関係あるものないもの、ちょっと目に触れた「いい話」なぞを記していきたいと思います。よろしければごゆっくりと。

タイタニック小咄    ハロー・ダーリン    修業証書    横浜にて     寝るときは裸?  大蔵大臣 英語でジョークにトライ 日本語が・・・ 気象の学会・・


タイタニック小咄

ホームページをぶらぶらしていたら、鳥羽商船高等専門学校の校長先生の「国民性」と題する秀逸なエッセイが目にとまりました。その一部はタイムスの記事に関するものですが、訳も素晴らしいので、そのまま記しておきます。
1999年2月のタイムスの雑誌に次のようなジョークが載っていた。タイタニックの海難の時、船長は乗客に「女性子供はボートに乗って下さい。男性はボートがありませんから海に飛び込んで下さい」と申し渡した。然し誰も海に飛び込む者はいなかった。そこで船長はイギリス人には「貴方はジェントルマンになって下さい(You must act like gentlemen)」と言ったら、イギリス人は海に飛び込んだ。アメリカ人には「貴方は今、勇士になるチャンスです(You can be heroes)」、アメリカ人は直ちに海に飛び込んだ。ドイツ人には「これは規則ですから(It's the rule) 」といったら、船長の言うことに従った。残ったのは日本人である。そこで船長は日本人に対して「皆で決めたことです(It's the consensus)」、といったら渋々飛び込んだというのです。日本人としての私はひどく馬鹿にされたような気持ちであるが、日本人というのは行動を起こすまでに、何事に拠らず時間が掛かるから、この世界のスピード時代に付いて行くためには、皆のコンセンサスを得るまでは何にも出来ないようでは困るわけで、個性あるリーダーの手腕が各機関で求められているわけである。それは兎も角として、ここに上げられたジョークはそれぞれの国の国民性の面から見ると、まさに言い得て妙であり、このジョークに拍手を送りたい。

以上です。You can be heroes なんてのはまさしくアメリカ人の特性を言い当てて、眼前髣髴の感ですが、余計なコメントはこの程度にして、鳥羽商船高等専門学校のホームページはこちらです。


ハロー・ダーリン

もう20年近く前のことになります。アメリカに行きたくないか、という甘い言葉に目がくらんで手を挙げてしまったのが運の尽きで、泣く子もだまると当時言われた米海軍潜水医官課程に行くことになってしまいました。そのコースはまるで体育会系。朝から夕方まで、走って泳いで潜って飛んで跳ねて、申し訳にちょっとばかりデスクに座って、というわけで、言うなれば、もともと乏しい頭でご奉公、というよりも頭以上に欠陥品の体でご奉公、の課程です。

そこは軍隊ですからさまざまな号令がもちろん英語でかかります。軍隊固有の、「整列」とか「回れ右」てのはもう忘れてしまいましたが、凍った地面で来る日も来る日も課せられた筋力トレーニングの号令は忘れようがありません。アメリカでは感心なことにどんな些細な訓練にもたいていは事前に説明がありますが、この場合も例外ではありません。腕立て伏せや懸垂を毎朝行う、などと説明があります。腕立て伏せのプッシュアップ、懸垂のプルアップ、などは字面(じづら)からだいたいわかりますが、中に「ハロー・ダーリン」てのがある。これがわからない。質問してみると、ニヤッとして、やればわかる、という。

「ハロー・ダーリン」の実施要領(自衛隊用語というか軍隊用語に染まってしまっていると我ながらあきれてしまいますが、要するにやり方のこと)は以下の通り。即ち、地面に仰向けに寝そべって、踵が地面から握り拳で1〜2個ぐらい離れたところにくるように、つまり地面に足をつけないようにして大腿から先を伸ばす。そのまま両足を揃えた状態から、ワン・ツー・スリー・フォーというかけ声に合わせて、この4拍で2度足を開閉する。これを一回として、二回目はツー・ツー・スリー・フォーと声をかけて、これを50回から100回、さらに気が向けば200回ぐらいやる。興味がおありでしたら試してみて下さい。かなりハードなこと請け合い。

以上で、なぜこの動作をハロー・ダーリンというかおわかりだと思いますので(おわかりにならない方は隣の方にそっと訊ねてみて下さい。きっと教えてくれると思いますよ)、これ以上の説明は省きますが、こういう言葉が話し言葉の中だけでなく、訓練の説明書にも堂々と使われていました。それに加えて、実際の訓練の状況も説明しておいた方がよいと思います。と言うのは、アメリカでは当時からすでに沢山の女性兵士や教官がいて、彼女らも何の臆するところなく、「次はハロー・ダーリン100回!」なんて、声をかけているのです。

最近の日本でも男女平等の世界になりつつありますが、ここまで覚悟しているのかしら?


修業証書

前項に記したように、私は米海軍潜水医官課程を履修しましたが、そのときに貰った「修業証書」がちょっとユニークなので、まず最初に原文、ついで拙い訳を示しておきます。
Naval Diving and Salvage
Training Center


This is to certify that
****
Has successfully completed the prescribed course for
Diving Medical Officer
at the Naval Diving and Salvage Training Center and is therefore qualified
to disport himself among the denizens of the deep, mermaids and other
inhabitants of the realm of Neptune.

Maximum Depth Attained on Air 285 Feet.
Maximum Depth Attained on HeO2 300 Feet

Date 1 May 1981


海軍潜水・サルベージ訓練センター

これは **** が
海軍潜水・サルベージ訓練センターにおいて
潜水医官課程の所定のコースをつつがなく修業したので、
深海の住人、すなわち海神ネプチューンの王国の人魚やその他の生き物たちと
戯れる資格を有すると認めるものである。

空気最深深度 285フィート
ヘリウム酸素最深深度 300フィート

1981年5月1日


日本ではとても考えられない修業証書に、それまでの苦労がいっぺんに報われた気がしました。なお、上に示した到達深度はチャンバーの中での模擬潜水で、実海面の深度はもっとずっと浅いものです。


横浜にて

週間文春の「立腹・抱腹」に載っていたはなし。ずいぶん前のことでうろ覚えですが、適当に再構築・・
月日がたつのは速いものです。大仏次郎(おさらぎ・じろう)は私どもの年代にとっては大作家で、インテリぶった人はみなその名前を知っていましたが、今では口の端に上ることも稀になってきました。それはともかく、大仏次郎を記念する「大佛次郎記念館」が横浜の「港の見える丘公園」にあります。その近くにある喫茶店でのできごと。
休日の公園は若い女子大生やOLでいっぱい。そのうちの二人連れが私の居たテーブルのそばでにぎやかに話しているのが、聞くとは無しに、耳に入ってきます。「ねえねえ、この近くに大仏(だいぶつ)次郎記念館というのがあるんだって・・」「どこどこ・・」 私は、ああ、よくある間違いだな、とぼんやりしながらコーヒーを喫んでいました。私自身、最初は大仏(おさらぎ)次郎ではなくて、大仏(だいぶつ)次郎だと思っていたのですから。でも、次のやりとりを聞いて、カップを落としそうになりました。
「へーっ、大仏(だいぶつ)さんて、名前は次郎ちゃんて言うの?! かっわいい!」
たしかに、鎌倉の大仏さんも有名なのですが・・


寝るときは裸?

あまりに日常的で当然な事は逆に記録に残らなくて、後の人が誤解するというのはよくあることですが、同時代のことでも、住む世界が異なれば同じことが当てはまるかもしれません。以下は私がイギリス海軍で経験した話・・

15年ほど前のことです。海上自衛隊では潜水艦救難母艦「ちよだ」を用いて飽和潜水を本格的に実施するために(飽和潜水の説明は用語解説のページをご覧になってください)、そのソフトを英海軍から導入することが決定され、私どもが英海軍で飽和潜水の実地訓練を受けることになりました。

飽和潜水を行うに当たっては、艦上減圧室(チャンバー)といわれる狭い筒状の居住区の中で何日も過ごさなくてはなりません。そこはこれから潜る海の中と同じように圧力がかかっていますから、いったんこの中に入ると外に出ることはできません。食事も排泄もシャワーも中で済ませます。寝るのももちろん同じ減圧室のなかですから、その間、プライバシーはほぼ皆無です。

そのような環境の中で、当方も、私以外の5名は英海軍の20代の屈強の下士官や水兵からなる6名の潜水チームの一員として、訓練に参加する事になりました。というと、たいへん勇ましいような印象を持たれるかも知れませんが、残念ながら事実は甚(はなは)だ散文的。飽和潜水といってもいつも潜っているわけではありません。まず第一日目にやることは夕食を食うことと寝る準備をすることです。英国の例によって質素なメシを食ってのんびりした後はベッドメーキング。狭いチャンバーの中でこれから過ごすことになるベッドを作り終えると、新しい下着がチャンバーの中に差し入れられます。どうやらこれに着替えるらしい、というわけで、こちらは室内を見張っているカメラにできるだけ写らないようにと、こそっと着替えました。ところが野郎どもはカメラの眼など無視して、堂々とフルチンになっていきます。でも、まァ、これは昔からよく言われていることで、驚くことではないな、と自分に言い聞かせていたのですが、でも、でも、どうも様子が変。新しい下着を着ける気配がいっこうにあらわれません。いつまでも素っ裸でウロウロしています。すると、そのうちにそのままベッドの毛布 に潜り込んでしまう者が出てくるではありませんか!

結局、パンツをはいてベッドに入ったのは5人中わずかに1人で、他の4人は素っ裸のまま寝てしまいました!! しかも、海上自衛隊と異なって英海軍では就寝時間になっても一斉に消灯になるのではなく、チャンバーの中の潜水員の要請によってライトが消されますが、それまでは点灯のままです。そうしますと、狭い室内のベッドの真横を逸物をぶらぶらさせながら動くのがどうしても目に入り、こちらとしては何とも言えない感覚・・

と言うわけですが、このホームページをご覧になっておられる皆様方で、イギリス人が素っ裸で寝る、ということご存じの方、おられますか。私の乏しい読書経験ではそのように書いてある本に出会ったことはありませんが、これなどは冒頭に記したように彼らとしては当然のことであるがために、どこにも書かれていないに過ぎないのかも知れません。しかし、もしイギリスを本当に理解しようと思えば、この風習はいろんな意味で無視できないことのように思うのですが如何でしょうか。このことについてご存じの方、あるいはご意見がおありの方、是非お聞かせください。

と、ここまで書いて来て、イギリスに海洋文学の傑作中の傑作があるのを思い出しました。それは、邦訳「非情の海」という題の第二次大戦中にドイツUボートと戦ったコルベットと呼ばれる小さな護衛艦を主な舞台とした小説ですが、その終末あたりで主人公が婚約者と束の間の至福のひとときを郊外の一軒家で過ごす場面が出てきます。そこで、相手の女性が「私、これからずっと何も着けないで過ごすわ」と言うのですが、でもこれ、ちょっと事情というか条件が違いますよね。(ここの内容はうろ覚えで書いていますので、あとで確認の上間違っていたら訂正します)
注:本文はイギリス人を不当に中傷する文章ではありませんのでご留意ください。また「野郎ども」という言葉も、単に「男たち」という意味で使用しただけです。海上自衛隊の隊員が男たちを親しみを込めながらお互いにどうしようもないやつとしてとらえるときに使うことが多いようです。

大蔵大臣

律令時代から続いた「大蔵大臣」という呼称も平成13年にはなくなりそうですが、つぎのような「はなし」にはやはり古風な名前の方が相応しいかも。以下は第一次世界大戦以前の東ヨーロッパを舞台としたジョーク。

第一次大戦前の東欧の地図を見ると今よりももっとたくさんの王国や公国があったことがわかります。その中にはまわりを陸で囲まれ海に面していない国もありますが、それらの小さい国もれっきとした「海軍」を有していました。というのは、東欧では海のかわりに大きな川が国境沿いに流れており、その川面に海軍が砲艦を浮かべていたからです。

はなしは欧州が戦火にまみれる前の優雅な時代、はるか昔の「会議は踊る」の余韻をまだ引きずっています。そんな時に、東欧の小国の大使とアラビアのさる国の大使が舞踏会でちょっとした鞘当てをしたわけです。アラビアの大使が言いました。「あなたの国に海軍があるなんて、世の中には解せないこともあるもんですね」 すかさず、相手の大使が言い返しました。「ナニ、おたくに大蔵大臣がいるのと同じですよ」
注:アラビアという国を持ち出すのはまずいかな、とも思いましたが、「ヨーロッパとは別の価値観を有する国」などとすると、調子が出ないために、原典のとおりにしました。実際のアラビアに当てはめるつもりは毛頭ありません。

英語でジョークにトライ

外国人と会っていると日本人はまじめすぎる「too serious」とよく言われますが、もって生まれた遺伝子はどうしようもありませんし、それはそれでいい面もあるのだから、と口の中でいつももぐもぐつぶやいております。でも、ユーモアのセンスに欠けることも事実なので、ここは一つ、英語でジョークに挑戦してみようと思います。最初に断っておきますが、私は英会話は苦手で決して英語が達者なわけではありません。ですからここで示す英語もネイティブからみればおそらく変な英語でしょう。題材は、一番上に記してある「タイタニック小咄」。

英語で突然ジョークを言うのは不自然でなかなかきっかけがつかめませんが、映画のタイタニックなら、時には何とかジョークのきっかけまでたどりつけます。自然にうまくたどり着けない場合は強引にそこに話題を持っていってもいいでしょう。とにかくそこで、「タイタニックのジョーク知っているかい」と切り出します。簡単に"Do you know a Titanic joke?"でもいいでしょうが、不定冠詞の"a"があるために、どのジョークを指しているのかわからなくなって、下手をすると「ああ、知っているよ」なんて言われかねません。ここは"I've heard some interesting joke on the Titanic. You want to know it?" くらいがいいんじゃないかな。それから、ネタ元が雑誌タイムズですから、相手が読んでいる可能性もありますので、"It was on the Times magazine. Maybe you know it." とでも言っておいて相手が知らないことを確かめておいた方がいいかも知れませんね。マ、日本人が珍しくジョークを言おうとしているので、知っていても知らないふりを相手がするかも知れませんが、それはそれでどうでもいいこと。

さて、いよいよ本番。"There were four people on board from four different countries."「船には4つの異なった国から4人の人が乗っておりました」と言うのです。こう言うときにpeopleを使ってよいかどうか自信がありませんが、もともと片言の英語ですから気にしないこと。ついで、「彼らはイギリス人、アメリカ人、ドイツ人、それに日本人です」とやるわけです(英語は省略)。そこで「船長が彼らに言いました。ボートにはあなたがた4人分の席がないので海へ飛び込んでください。でも誰も飛び込もうとしませんでした」とやります。例えば"Captain told them. As there is not enough room for you on the boat, you gentlemen, please get in the water. But they are all very reluctant to do it." でもいいでしょう。関係代名詞や時制なども気にしない気にしない。

次は「最初はイギリス人です。船長はイギリス人に何と言ったでしょう。あなたは紳士です。そしたらイギリス人は海に飛び込みました」例えば"The first one is an English. What did the Captain tell the English man? (ちょっと間を置いて) You must act like gentlemen. Then, he got in the sea." とでも言います。そうすると、まわりの人は俄然興味を示してくるはずです。

そうなれば、後はしめたもの。「次はアメリカ人。船長はなんて言ったでしょう」"Next is an American. What did the captain tell him?" といきます。ネークストともったいをつけてゆっくりやるとよいでしょう。そこで早まってはダメ。周りの人がなんて言ったの、と聞きますが、すぐには答えないことがミソ。「考えてみて」"You guess it"と言います。すると、億万長者にするから、とか、大統領にするから、とかアメリカ人から連想しやすい答えが返ってきます。それからやおら、"Captain told the American (ちょっと間を置いて)you can be heroes." とやります。まわりの人の喜ぶこと請け合い。

でドイツ人に進んで同じようにやります。いろんな回答がありますから、同じように焦らせてから"It's the rule." と正答を言います。最後は日本人です。これは次のように言えばよいでしょう。"The last one is a Japanese. He does not like to get in the water at all." 同じように焦らせて、回答して貰います。サムライだから、とか、お金をあげるから、とか、仏教徒だから、とかいかにも外国人が考えそうな答えが返ってきます。そして、"It's the consensus." と言うと、笑うこと、笑うこと、たいていはハラを抱えて笑います。

このジョークは私自身何回か実地に試してみましたが、いつも大受け。パーティーが散会になる前にわざわざ寄ってきて「えーっと、最初はイギリス人だったっけ。次はアメリカ人、次はー? そうそうドイツ人、なんて言ったんだっけ、そうかそうかルールだ。日本人はコンセンサスだね」と確かめてから帰る人もいます。年の瀬も押し迫ってきています。忘年会やクリスマス会などで外国人と話す機会のある方、是非チャレンジしてみてください。

日本語が・・・

英語でジョーク、なんて暢気なことを言っていますが、今では日本語の方がちょっと問題・・・ と言うわけで、以下は当方が自衛隊で一番小さい江田島の病院の院長をやっていたときの話。

ちょっとくだけた席で病院の人と話していたときのこと。具体的に何を話していたか忘れてしまいましたが、こちらから若い医官に「こういうときは、カラメテからアプローチした方がいいんじゃないの」と言ったところ、相手はちょっとキョトンとした後、やおらこちらを見つめながら「いやーっ、院長って、そういう趣味があったんですか」と言う。何のことやら、さっぱりわからない。向こうはこちらのとまどいなどには関係なく続けて「うーん、さすがですね。でもー、院長も意外にワルですねー。やっぱ、あいては女性ですからね。でもー、そんなこと僕にはできませんよー・・・」と人聞きの悪いことを言う。

以下は、しばらく間を置いて、こちらがピーンときてからのはなし。

「バッカモン!カラメテだ。カラミじゃねーんだ!」「エッ、カラミじゃないんですか」「アッタリめーだ。カラミのわけないだろう、カラメテだ!」「カラメテって?」「それも知らないのか、オーテの逆だ!」・・・「エッ、院長は将棋もなさるんですか?」「アッホー、将棋じゃない!オーテモンのオーテだ!」「オーテモンって?」「・・」

最近は三橋三智也の「古城」を歌うひともめっきり少なくなったし、「大手門」を知らないのもしょうがないのかな・・  所詮、こちらが古いだけか・・・

ちなみに、カラメテは搦手と書き、大手門(追手門とも記す)の逆は搦手門で、正門ではなくて裏門を示します。それに、ちょっと理屈っぽいけれど、かの平家物語の一ノ谷合戦を扱った巻第九にも、寄せ手の源氏を描いて、大手の大将軍は蒲御曹司範頼(かばのおんぞうしのりより)、搦手の大将軍は九郎御曹司義経、と記してあるのを思い出していただけると嬉しいなあ・・

ところで、最近出版された岩波文庫の「平家物語」は出色。とても読みやすい。一度手に取ってみられたら・・

気象の学会・・

次も江田島にいて、病院長をやっていた頃のはなしです。

あるとき、潜水医学関連の学会に出席するために、しばらく江田島を離れなければならなくなりました。こういうときは、私も小なりとは言え、自衛隊の一つの機関の指揮官ですから、江田島地区の最先任者(一番上の人)にそのむね断らなくてはなりません。

いつものとおり、あまり覇気のない声で、「あのー、今度○○で日本高気圧環境医学会が開かれますので、それに参加させていただきたいと思います。よろしくお願いします。」と言ったところ、思いがけない返事が返ってきました。

「へー、池田クン、君は潜水が専門だと思っていたけど、気象もやるのかね。ま、確かに海の中にまで影響するかも知れんわな」「はっ、別にそれほどまで・・」「海は(海上自衛隊はの意味)だいたい低気圧が問題になるんだが、ふーん、医学の世界では高気圧が気になるんだね。高気圧がつづくと、気がかわるとか」「まさか、それほどじゃないと思いますけど・・」などと、トンチンカンなやりとりがひとしきり続いた後、部屋一杯に響く次のような言葉がありました。「ナニッ、高気圧ってのはあの高気圧じゃないの?エッ、潜水も高気圧に含まれるって?そりゃーないよ。無茶だ。こじつけだよ。高気圧は高気圧だよ。ウン、高気圧と言えば、気象の高気圧に決まっとるじゃねーか。」

たしかに、言われてみればそのとおりで、私もそのあと数人の人に、「日本高気圧環境医学会」という言葉から何を連想するか訊ねてみましたが、潜水を連想する人は一人もいませんでした。

ちなみに、日本高気圧環境医学会は高圧酸素治療や潜水に起因する疾病などを扱う日本で唯一の学会です。当方のように、昔からその中で活動を続けていると、潜水も当然その中に含まれている、と思ってしまいます。でも先入観なしに常識的に考えると、確かに潜水とはあまり関係のない言葉ですね。げに恐ろしきは思いこみ・・