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環境生理学 試験解答 (2003.1.21)  

1.生物学的適応の典型例を一つ挙げ、そのメカニズムを述べよ。

  鎌状赤血球症:鎌状赤血球症のヒトは貧血に罹患しやすい一方で、マラリアへの抵抗力が強い。
           したがって、アフリカの黒人ではこの疾患の遺伝子を有するヒトが多く認められる。

2.ホメオスターシスの概念を述べよ。

  生体が定常状態にあること。
   補足:生体は外界の刺激に応じて自分自身を変化させ、その安定性を確保している。

3.生体の調節機構は大きく分けて神経によるものと内分泌によるものの二つに分けられる。

神経による調節はさらに大きく次の二つに分けられる。

  i  交感神経              ii  副交感神経

 そのうち、エネルギーの消費を少なくするように働くのはどちらか。

   副交感神経

内分泌による調節は()性調節とも言われる。

4.ホルモンの定義とその特徴を述べよ。

     特定の内分泌腺から血液中あるいはリンパ液中に分泌され、血行によって遠くに運ばれ、特定の標的器官に作用して特異的な効果をあらわす物質(古典的定義)

    生体細胞で産生分泌され、ごく微量で有効である生理的調整物質(広義)

5.環境ホルモンという用語がなぜホルモンのオーソドックスな定義から離れるか述べよ。

        環境ホルモンとは、体内でホルモンの分泌をつかさどる内分泌系に影響を与える化学物質の総称であるので、ホルモンの定義とは異なる。

6.解糖には( 好気 )的解糖と( 嫌気 )的解糖があり、エネルギー産生は( 好気 )的解糖の方が大きい。

7.酸素中毒には高い圧力に比較的短時間曝露されたときに生じるのと低い圧力に長時間曝露されたときに発生する二つがある。前者と後者が主に認められる典型的な臓器を一つずつ挙げよ。
     前者= 脳            後者= 

8.次の血管は機能の面から見てどのように呼ばれるか記せ。

    細脈 − ( 抵抗  )血管

    毛細血管 − ( 交換  )血管

    静  脈 − ( 容量  )血管

9.ショックの定義と種類を記せ

    急性に起こる全身の血液循環、とくに末梢循環が傷害され、血圧を保ちにくくなった状態。

    分類はいくつかあるが、たとえば

             a: 心原性(心臓性)ショック

         心臓の収縮力の低下によるもの(例:心筋梗塞、不整脈)

            b: 静脈還流の低下

          i 循環血液量の低下によるもの(例:出血)

         ii 血管の緊張力の低下によるもの

        神経性、細菌性などがある。

10.潜水を行うにあたって解決しなければならない主要な課題として、圧力(減圧)の他に二つある。それを挙げよ。

   呼吸の確保、体温の維持

11.高圧状態から大気圧状態に帰還するときは規定の速度でゆっくり減圧しなければ不活性ガスが( 過飽和 )状態になって( 減圧症 )に罹患する可能性が高くなる。括弧内に記すとともに、そのときに生体内に何が生じるか記せ。

  気泡

12.ヘモグロビンの酸素飽和曲線がpHあるいは炭酸ガス圧力によって変化するが、なぜそれが生体にとって好都合か述べよ。

 ヘモグロビンの酸素飽和曲線は、炭酸ガスが多かったり血液が産生に傾くと、酸素飽和度が低くなることを示している。生体の末梢では炭酸ガスが多くpHも低いために、ヘモグロビンは酸素にくっつきにくく、言い換えれば酸素を放出しやすくなっている。肺ではその逆の状態なのでヘモグロビンに酸素がくっつきやすく、言い換えれば酸素を取り込みやすくしている。すなわち、生体全体としてみれば酸素を効率的に利用できるようになっている。

13.長時間宇宙空間に滞在するときに認められる大きな問題を二つ挙げよ。

      特に二つというわけではないが、主なものに、カルシウムの骨からの逸脱、筋力の低下、循環状態の変化、などが挙げられる。

14.ヒトが寒冷気候で生存するために認められる生体の機構を3つあげ、それぞれを簡単に説明せよ。

a: 代謝型馴化: 熱産生を高めることにより馴化−非ふるえ熱産生の増加
b: 断熱型馴化: 血管収縮による断熱性の増大と中等度の体温の低下 例:オーストラリアのアボリジニー

c: 慣れによる冬眠型馴化: 体温の調節水準を下げて低体温に慣れた生活をすることによる。例:ノルウェイのラップ族等
(なおこれは上二つとの混合していることもある)